世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

言われてみればその通り。食べ物の不自然を突いたソーシャルキャンペーン

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収穫の秋。多くの野菜は畑でのびのびと育ったはずなのに、スーパーに並ぶ野菜が工業製品のように、みんな同じ形をしているのはなぜでしょう?今回は、そんな疑問から現代の食にまつわるシステムの無駄を明らかにしたスーパーマーケットのソーシャルキャンペーンをご紹介します。さすがは農業大国フランス発のアイデアです。

<不名誉な野菜とくだものたち>
<英文和訳>
 野菜やくだものは不条理な状況に立たされている。1日5種類以上を摂るよう奨励され、家計にとっては結構な負担となっている裏側で、年間3億トンもの野菜やくだものが売られる事なく廃棄されている。
農家「規格に合わないものは捨てます」
EUは2014 年を食べものの無駄に反対するヨーロッパ年に制定。そこでフランス第3位のスーパーマーケットチェーン、インターマルシェは規格外で用なしとされていた野菜やくだものを活用する事にした。
「不名誉な野菜とくだものたち」キャンペーン。出演は「グロテスクなリンゴ」、「おかしなじゃがいも」、「不気味なオレンジ」、「失敗したレモン」、「型くずれのナス」、「醜いニンジン」、そして「不幸なミカン」。我々はこれらの中から毎日5品の不名誉な野菜やくだものが食べられるよう、通常品の3割引の価格で人々に提供したのだ。
どのように?我々は農家から、通常捨てられる不名誉な野菜やくだものを仕入れ、店頭で販売したのだ。そのための売り場やラベルも設置。レシートにも登録した。これらが規格品に劣らぬ品質であることを分かってもらうために、我々は不名誉な野菜スープやフルーツジュースも提供。・・・これらの取り組みは報われた。ある意味「新しい」野菜やくだものの登場は、メディアの関心を惹き付けることにも成功。問題はただひとつ。売り切れてしまったことだ。最初の2日間で、店舗あたり平均1.2トンの売り上げを記録。ストア全体の流通も24%増加した。そしてこの取り組みは、食べもののまわりで生まれている無駄についての関心を向上させた。
街の声A「いいアイデアね、祝福するわ」
街の声B「素晴らしいわ、私たちはなんでも無駄にしすぎているし」
この取り組みはさらに、SNS上でも話題化に成功。一ヵ月後、このキャンペーンの認知は1300万人に到達し、メディアにも大きなインパクトを与えた。最終的に「すべてのスーパーマーケットがこの取り組みをすべき」というジャーナリストまで現れた。
ジャーナリストA「すべてのスーパーが取り組むべきですね」
ジャーナリストB「素晴らしい!」
「不名誉な野菜とくだものたち」—食べものの無駄に対する、誇り高き戦い。
<インターマルシェ>
 
味も栄養も同じなのに、見栄えだけの理由で大量に廃棄される命の糧。確かに違和感を感じざるを得ない光景です。このように「なんとなくおかしいと思ってたけど見過ごしていた」という物事は、世の中には他にもたくさんあると思います。そこを分かりやすく突くことでムーブメントを作り出した、巧みな例だと思いました。
 
ちなみに急に番宣っぽい雰囲気になるのが恐縮なのですが、私が創刊時からお手伝いしている食べる月刊情報誌「東北食べる通信」も、現代の食の問題についての疑問から生み出された雑誌です。
 毎号、東北で食べものづくりや漁業に取り組む志ある生産者を取り上げて、その特集記事に彼・彼女たちが実際に作った食べ物が1品付いてくる、という変わった雑誌なのですが、学びながら食べる事で、都会の生活者の中に、生産者たちへの想いや命へのリスペクトを取り戻してもらおうという試みです。
 
こちら、明日10月31日(金)から11月4日(火)まで東京ミッドタウンで開かれるグッドデザイン賞2014の展示会に大賞候補のひとつとして選出されていますので、お時間のある皆さまはぜひ、現物を見に来てくださいね。
 
※展示会の詳細はこちら
 
それでは、今日も当たり前のように満腹になるまで食べられることへの奇跡を想い、命を有り難くいただきましょう。