世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

フィリピン発・台風からの復興を支えたドネーションキャンペーン

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温暖化の影響でしょうか。今年もひとつひとつの台風がもたらす各地の被害が大きく、心落ち着かない秋ですが、今回は昨年11月の台風30 号「ハイヤン」で壊滅的被害を受けたフィリピンの街を復興すべく、SNS上で展開されたドネーションキャンペーンをご紹介します。過日の「アイスバケツチャレンジ」が世界に拡散された時の勢いを思い返してみても、特に災害時など、緊急の支援が必要な場合はSNSを活用したキャンペーンが「スピード」という面からは有効なのかもしれません。

ユニセフとのコラボによるこの「アンセルフィー」キャンペーンは、自分の姿を撮影してアップする「セルフィー」というSNS上の新風習を、ドネーションの仕組みの中にうまく取り入れたアイデアです。ぜひご覧ください。

 
「アンセルフィー(Unselfie)キャンペーン」
<ビデオ和訳>
2013年は、「セルフィー(Selfie)」という自分撮りの習慣がオックスフォード大学に「今年の言葉」として選ばれるなど、世界的にひろまった一年だった。そしてフィリピンは、世界で最もセルフィーが発信される都市を持つほどセルフィーが盛んな国でもある。そして同年末、フィリピンを記録的に超大型の台風が襲った。
 
レポーター“ハリケーンのカトリーナとサンディを合わせたよりも強い風が、フィリピンを襲っています”
 
SNS上のフィードは、世界中からの支援の申し出であふれ返った。ただ、誰もが支援の方法が分からず、途方に暮れていた。そこで私たちは、人気の「セルフィー」を活用して、支援の方法が編み出せないかと考えた。私たちはユニセフ・ワールドワイドと協同し、自己アピールのためでなく、他人のために行う新しいカタチのセルフィー「#アンセルフィー(Unselfie、UnはユニセフUnicef)の頭文字でもあり、同時に“Not”セルフィー、の意味をもつ)」を考案した。我々は人々がセルフィーを撮影してSNSにアップする際、顔の前に、ユニセフのドネーションサイトへのリンクを書いた紙を置いてもらうようお願いしたのだ。
 
この単純な仕込みは、世間に驚異的な反応をもたらした。最初の数個のポストをきっかけに、何百もの賛同者が自身のアンセルフィーを実施。赤十字など、他のチャリティー団体もこの仕組みを活用した。そしてものの3日間で、アメリカのケリー国務長官がアンセルフィーを行うなど、世界の要人たちがアンセルフィーに乗り出したのだ。各国のメディアはこの社会現象をこぞって取り上げた。
 
“デジタル時代の支援に新しい考え方をもたらした”  ー ハフィントン・ポスト
“毎日、世界中の賛同者がアンセルフィーを行っている” ー BBC
“アンセルフィーを考案した人は天才である” ー CNN
 
RTS(スイス) “アンセルフィーキャンペーンは、人々をフィリピンの被災者のためのドネーションに駆り立てています” 
PRI “今回取り上げたいのは「アン」セルフィーという、ハイヤン台風の生存者への支援を活性化する取り組みです”
 
ついには成人誌までこの活動に賛同した。フィリピン最大の人気誌も、国民的女優のアンセルフィーを表紙に飾った。本当の意味で、アンセルフィーは社会的意義を持つムーブメントになったのである。
結果、ドネーションには3億ドルが集まり、被災地の復興のために活用された。
 
「#アンセルフィー 〜セルフィー(という利己的行為)をもっと、他人のために〜」
 
フィリピンの人たちと同様、私たちも日本に住んでいるかぎり、台風はもちろんゲリラ豪雨地震など、いつ大災害の被災者になってしまうか分かりません。その時にまわりの情報に振り回されるばかりでなく、アイデアの力でどのように人々に貢献できるのかを、普段からしっかり考えておきたいと思いました。