世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

いま再び核の恐怖に警鐘を鳴らす、長崎新聞のキャンペーン

Photo by Tayawee Supan on Unsplash

歴史を繰り返せないほど進化してしまった人類の分岐点

ロシアのウクライナ侵攻により、人類の理性への信頼が揺らいでいます。合理的思考を超えて大国から軍事的侵略を受けうる、という事実を前に、周辺各国が慌てたように軍拡競争を始めました。

我々はまた、再び世界大戦へと歩み始めているのでしょうか?しかし過去の大戦と違い、我々はすでに全世界を破滅へと導く核兵器を持っています。次に歴史が繰り返した時、私たちにはもう、歴史自体が必要なくなるのかもしれません。

ということで今回は、かつて広島に次いで原爆が投下された都市、長崎の地方紙・長崎新聞が行った核兵器の恐怖を訴えるための取り組みをご紹介します。

こちらも先週に引き続き、多様な文化が共存するアジアならではの、各地の伝統や風習に根ざしたソリューションを評価するAdfest2022のLotus Roots部門を受賞したアイデアです。

「13,865の黒い点と2つの赤い点」

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【雑和訳】ナレーション:今も世界には13,000発以上の核兵器が存在します。そして長崎は、かつて原爆を投下された世界中でたった2つの都市のひとつとして、その恐ろしさを伝えてきました。

第二次世界大戦から76年が経ちました。(*画面上では2021年現在、原爆を生き延びた語り部がもう33,243人しかいない事を示す)

長崎唯一の地方紙として、長崎新聞若い人たちや長崎以外の人たちを含む、原爆の悲惨さを体験したことがない人たちに向けて、この問題の深刻さを伝えたいと考えました。

「13,865の黒い点と2つの赤い点」。このビジュアルは、言葉ではなく、13,865の黒い点で表現されました。黒い点の中には、赤い点が2つ。

黒い点は、世界に今ある原爆の数を表し、赤い2つの点は、広島と長崎で使われた2発の原子爆弾を表します。

核兵器が存在している以上、それが使われるリスクも存在しています。」

数字を見せる代わりに、原子爆弾の数とその恐ろしさが読者にも直感的に理解できるよう示されたのです。たくさんの人々が、この広告について触れたことをシェアしました。この話題は、主要なテレビ番組でも取り上げられました。

そして日本中の人々が長崎に原爆が投下された76年前の8月9日に注目するとともに、今もなおそこにある危機について考えたのです。

さらに私たちは、この広告ビジュアルとガイドブックがダウンロードできる教育用のWebサイトも立ち上げました。

この作品は広告の枠を超えて、日本中に教材として活用されています。

文字に頼らないことの強さ

いかがでしたでしょうか?

事実を伝えるニュースにはどうしても文字や言葉が必要で、そもそも人々がそのニュースに関心なければ見聞きされずにスルーされてしまう、という弱点があります。

一方、「強い広告」にはたった一枚のグラフィックや画像のアイデアで、無関心な人々を直感的に惹きつけ、考えさせる力があります。

核兵器が私たちにもたらす結末について想いを巡らせる機会が減っていく中、こうしたビジュアル表現で人々の想像力を刺激する機会は大切ですし、そういった意味でも新聞など、プリント媒体にはまだまだ活用のチャンスがある、と感じさせてくれる取り組みでした。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

社会に組み込まれた女性蔑視に気づき、立ち上がったフィリピン発のソーシャルキャンペーン

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Photo by Yannes Kiefer on Unsplash

 

4月8日に発表になったアドフェスト受賞作からご紹介

毎週更新を目標に運営しているこのブログですが、先週は第3回目のコロナワクチン接種の副反応により頭が働かず、更新しそびれてしまいました。く、悔しい…。

一度ルーチンが切れ、しかも仕事も忙しいとブログの更新も怠りがちになる(経験者談)ものなのですが、今回は運よく、4月8日に発表になったアジア太平洋地域の広告キャンペーンを対象にしたアワード、アドフェスト(Adfest)の受賞作から興味深いネタをたくさん仕入れることができ、モチベーションを無事に保つことができそうです。

ということで今回はその受賞作の中から、フィリピンの人々が戦後、アメリカ軍が残していったジープと貨物自動車を組み合わせることで生み出した乗合タクシージープニー(Jeepney)」にまつわる伝統的な”女性蔑視”に気づき、正そうとした取り組みをご紹介します。

多様な文化が共存するアジアならではの、各地の伝統や風習に根ざしたソリューションを評価するAdfestのLotus Roots部門を受賞したアイデアです。

「Right the Ride/ 乗り物を正そう」

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【雑和訳】ナレーション:フィリピンのジープニーは、単なる交通機関というだけでなく、ユニークな文化的象徴で、まごうことなきフィリピンの道路の王様です。しかし、その煌びやかな色彩に、これまで何十年も語られてこなかった問題が潜んでいます。

女性蔑視と性差別。ジープニーの外装は性による差別的描写に溢れています。その内装はさらにひどいものです。女性にとって侮蔑的なサイネージが滑稽かつユーモアなものして飾られているのです。(*画面では、「お姉さん、ただでやらせてくれ」「独り身で酔えば、妊婦で起きる」などの内装のメッセージが例示される)

ジープニーは、侮辱で溢れているのです。女性蔑視は現在社会に存在すべきではありません。特に(ジープニーのように)、文化的に愛されているシンボルにおいては。

今こそ、それを正すべき時です。(*画面では、ジープニーの扇情的な外装のイラストや内装のメッセージが、女性をリスペクトしたものに次々と塗り替えられていく)

このキャンペーンは、社会に待ち望まれていた論争を引き起こしました。ニュースの一面を飾り、フィリピン最大の交通公共機関から交通組合、女性団体に至るさまざまな団体から継続的なサポートを得ました。

(*フィリピンの人権団体コミッショナー「我々はジープニーを変革し、安全な場所のための法案を後押しします」)(*国連系人権団体のアドバイザー「まさにジープニーのような場所で、人権が尊重されることは社会にとって意義のあることです」)(*公共交通協同組合会長「どのジェンダーに属するかに関わらず、人々が安全であることを保証したいと思います」)

この挑戦は始まったばかりですが、ジープニーと人々の心を、正しい方向に導き続けることでしょう。

これっておかしくない?に気づき、立ち上がることの大切さ

いかがでしたでしょうか?この事例を見て「これは海外での話だから、自分たちには関係ないよ」で済ませてしまうのか、自分の社会に同じような問題がないか、思いを巡らせてみるかで結果は大きく異なってくると思います。

どの社会にも、それぞれの文脈で当たり前とされているものがあります。しかし「それぞれが同じような人になるよう教育し、彼らに同じことを効率的にやらせる」ことが効果的で、社会的に善になり得た時代はすでに終わっています。

多様性が社会や企業の推進力となる中で、前の時代に設定された「同質性を強いるもの」がまだまだ、世界中のあらゆる場所で、あらゆる形で残っています。

日々の繰り返しの中で感じた「これっておかしくない?」とか「これ、自分が当事者だったら最悪だと思う」ということにきちんと向き合い、声を上げて正していくことの大切さをこの素晴らしい取り組みは教えてくれます。

(そして私はフィリピンにまだ行ったことがないのですが、3回目のワクチン接種も済んだことですし、チャンスがあれば是非このジープニーに乗ってみたいな、と思いました。)

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

ジェンダー問題に「就活」の角度から切り込んだ日本発キャンペーン

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Photo by James A. Molnar on Unsplash

性的マジョリティには気づきにくい就職活動の”壁”

東京の桜は近年、3月の終わりには散ってしまうことが多いのですが、今年はこの記事の執筆日(4月2日)現在、まだ桜は咲いているようです。

ということで昨日は花びらが舞い散る中、多くの新入社員が入社式を迎えたことと思います。(残念ながらリモートでの入社式が多かったのかな、とは思いますが…。)過酷な就職活動を乗り越えて社会人となった皆さん、おめでとうございます!

ということで今回は、性的マジョリティの人々が感じにくい、就職活動におけるLGBTQの人々の精神的な「壁」を見事に問題提起したパンテーンのキャンペーンをご紹介します。

先日行われたアジア太平洋・アセアニア地域におけるクリエイティビティの祭典Spikes Asiaのソーシャル&インフルエンサー部門でグランプリを獲得したアイデアです。

「#PrideHair この髪が私です」

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「ブランドが意見する時代」の教科書的取り組み

いかがでしたでしょうか?多くの性的マジョリティにとっては「どちらの性別で就活すれば良いのだろう?」という悩みがあること自体が盲点だったと思います。

さまざまな調査によると、日本では人口の10%前後がLGBTだといわれています。「左利きの人とさほど変わりのない比率」で存在しているそうで、そう考えるとその比率の高さがイメージしやすいのではないでしょうか?

私も左利きですが、職場でも、最近ではCMでタレントがお箸を使っているシーンなどでも「あ、この人左利きなんだ」と親しみを感じることが多いです。

それを同じ比率で性的マイノリティが存在しているという数値と、日常生活での実感値とのギャップを考えると、かなり多くの人たちが公の場所で「自分の本来の性」を隠していることがわかります。

人間は、本来の自分でいることを認められたときにその個性を伸び伸びと、ポジティブに発揮します。なのにそれを発揮できず、男じゃないのに「男なんだから気合いで乗り越えろ」とか、女じゃないのに「女らしくしなやかに立ち振る舞いなさい」など、頓珍漢なことを言われて暮らしていかなければならない人々がこの社会に10%いた、という事実は性的マジョリティにとってかなりの衝撃なのではないでしょうか?

このムービー、性的マジョリティにとってはLGBTQの身近さに気づかせてくれる第一歩となりますし、LGBTQの皆さんにとっても励みになるムービーだと思います。

さらにいいな、と思うのは、これが髪の毛を扱うブランドによって制作されたムービーであることです。

髪の毛は体の一部で、とてもパーソナルなものでありながら、同時にそのスタイルで社会的な意味が変わってくる、自己と社会の橋渡しとなるパーツです。

そのパーツを扱うヘアケアブランドとして、「しなやかな洗い上がり」や、「髪、より艶やかに」といった機能的ベネフィットから離れ、あるべき自己と社会の関係について意見を発し始めたというのは、すこぶる21世紀的なマーケティング手法といえるでしょう。

実はパンテーンは日本市場において数年前から、他に先駆けてこのような「ブランドが意見する」取り組みを始めている稀有な存在です。

ideasforgood.jp

この動きが今後どう展開されていくのか?そして、この流れに乗って意見を表明しはじめる他のブランドが現れるのか?期待を込めて見てまいりたいと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

男性優位のインド議会で、女性政治家の誕生を力強く促進したアイデア

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Photo by Ron Hansen on Unsplash

日本のジェンダーギャップの現実を表す議会の男女比率

過去の記事でも触れたことがありますが、女性の社会進出の遅れは世界と比べて、日本社会が最も遅れている部分のひとつ(156カ国中120位)です。

それを端的に表しているのが、議会の男女比率の偏り。以下の記事によると、昨年秋の衆議院選の結果、ただでさえ低い男女比率がさらに悪化し、全議員のうち、女性の占める割合はたったの9.7%だそうです。

news.yahoo.co.jp

政治における男女比率の歪みは日本のジェンダー・ギャップ指数を引き下げている大きな要因(156カ国中147位)となっていて、もちろん指数が判断基準のすべてではないものの、現実の社会と明らかに異なった男女比率で議論を進めなければいけない、という歪みが日本の政治家たちの仕事の妨げになっていることは間違いないでしょう。

…ということで、今回は日本と同様、男女比率の不均衡に悩むインドの政治に対して行われた興味深いアイデアをご紹介します。

先日行われたアジア太平洋・アセアニア地域におけるクリエーティビティの祭典Spikes Asiaにて、ジェンダー問題を扱ったアイデアを評価する部門、Glass: The Award for Change部門でグランプリを獲得したアイデアです。

「”私をノミネートして”セルフィー 」

youtu.be

[雑和訳] ナレーション ”インドは世界最大の民主主義国家だ。ただ、国会議員全体で女性が占める割合は10%にも届かず、民意の50%は顧みられることも、聞き届けられることもない。しかしなぜ、女性は議員になれないのだろうか?

女性たちにとって、低いレベルから国会議員の候補になるには、各々の政党のリーダーからノミネート(指名)される必要がある。そしてそのリーダーたちの90%以上が男性なのだ。そして彼らと話す際、私たちが決まって言われるのが「じゃあどこに(ノミネートすべき)女性がいるのだ?」ということ…”

実行団体SHAKTIのTaraさん「今こそ、彼女たちがどこにいるかを知らしめるときです!」

ナレーション ”インド唯一の政治における女性の役割拡大を求める団体SHAKTIは、インドの新聞The Times of Indiaと共に'私をノミネートしてセルフィー'をおこなった。

我々はこの取り組みを、最も男女の不均衡が激しい大きな州Biharで開始。140の草の根の団体が、45,000人の住民にこの取り組みを知らせた。それぞれの女性は履歴書の代わりにセルフィーを作成。自身の公共活動における実績や成果に加え、ノミネートする側へのアピールを添えて送付した。

我々はそれらのセルフィーを政党のリーダーたちへ送付。彼らが70年間無視してきた存在を突きつけたのだ。

この試みはムーヴメントとなり、スマホから新聞、そしてテレビへと拡散していった」 

ニュースキャスター「Biharの政治状況は混沌としていますが、今回はさらに女性の存在が注目を集めています」

ナレーション ”結果、ノミネートされた115人中、22人が女性となった。これはBiharの歴史では前代未聞のことである。そして72人の女性が公共の政策委員会のメンバーとなった。

私たちは、これまで(インドに)存在しなかった、リーダーとなりうる女性人材のパイプラインを作ったのだ。そして我々のムーヴメントはこれからも続いていく…” 

Taraさん「周りの予想を覆して、SHAKTIのボランティアたちはスマホとセルフィー用のカメラだけを持ち、州を跨いでこの取り組みを拡大させています」 

ナレーション ”私たちのセルフィーは、(国会の)半分が私たちになるまで止まりません。半分は、私たちのもの”

カギは自発的参加を促す動機付けと、ハードル下げ

いかがでしたでしょうか?男性優位の仕組みが、大多数の人々には気づかないレベルにまで組み込まれてしまっているこの社会でジェンダー問題を解決するには、どうしても当事者たちの自発的な働きかけが欠かせません。

とはいえみんな自分の暮らしで忙しいし、声を上げることで起こりうる、さまざまな面倒を考えると多くの女性たちが立ち上がるのをためらってしまうのはある程度、仕方がないことなのかな…と思います。

しかし、そんな時に出番となるのがアイデアです。どのように人々の考えを変え、動機づけるのか?そしてやる気になった人たちが行動する際に直面するハードルをどのように下げるのか?

今回のアイデアでは、セルフィーを使って軽い気持ちで参加できる「プチ立候補」という新しい選択肢を女性に与えたことで、彼女たちの政治参画のハードルを思い切り下げたところが素晴らしいな、と思いました。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

栄光の歴史のダークサイドを巡る、大英博物館未公認ツアーへようこそ

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Photo by Hert Niks on Unsplash

完全に正しい歴史は存在するのか

一昔前、広告会社の表現担当者たちが新聞広告という枠でその腕を競う新聞広告クリエーティブコンテストで、素晴らしいキャッチフレーズが受賞したことがありました。

それは、子供のつたない手書きの文字で書かれた「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」というもの。(↓こちらです)

最優秀賞「めでたし、めでたし?」

確かにこの世の全てのめでたしめでたしの裏には、その犠牲になる存在がいます。そして何をもってめでたしとするかについては、みんなで真摯に考え、悩み、議論し続けることが過去から学ぶことで前進してきた人類としての責務なのだと思います。

今回はそんなことを深く考えさせられる、VICEワールドニュースによる意義深い取り組みをご紹介します。先日行われたアジア太平洋・アセアニア地域におけるクリエーティビティの祭典Spikes Asiaのデザイン、モバイル、PR、ラジオ&オーディオ部門の4部門でグランプリを獲得した怪物級のキャンペーンです。

まだまだ欧米中心の広告業界では気づかれにくい、このような視点が高く評価されたというのは嬉しいですし、アジアならではの視点を世界に提示したという点でも意義深い取り組みだと思います。

「フィルターを解除した歴史ツアー / The Unfiltered History Tour」

[雑和訳] ナレーション ”大英博物館は人類の歴史や芸術、文化を讃える公共施設です。ここロンドンにある、世界中で収集された8万以上の展示物を見にきてください。あなたは今、Gweagalの盾(原住民の盾)を見ています。ジェームス・クックは英国海軍の船長で…”

(*画面上の指がスマホをタップすると同時にナレーションがインド訛りの英語に変わる)”…我々は今、我々から奪われた忌々しい盾を見ています”

タイトル:「大英博物館の新しいツアー、はじまる」「…ただし大英博物館はまだ、これを知らない」「VICEワールドニュース提供、フィルターを解除した歴史ツアー(The Unfiltered History Tour)」

インド訛りの英語のナレーション”大英博物館のコレクションは‘祖先から伝えられてきたことを誇る’という、シンプルなアイデアに基づいている”  解説ナレーションA:「これらの遺物がどう取り扱われるかについては、(元来の所有者である)我々の決定に基づくべきだ。もし我々が保存できないとしても、それは我々が決めることで、大英博物館が決めることではない」

インド訛りの英語のナレーション”(英国の)人々は何をもって所有権が主張できると学んだのか?”  解説ナレーションb:「あなたたちは我々(の民族)が、人に我々の歴史や文化を伝える知性がないとおっしゃっているのですか?」

インド訛りの英語のナレーション”もし英国が展示物の返却を始めたら、博物館はほとんど空っぽのホールになってしまうだろう”  

タイトル:「論争を呼ぶ大英博物館の展示物についてのツアーを体験しよう」「…それらを奪われた国の人々によるナレーションと共に」「インスタグラムのフィルターと、没入感のあるオーディオで」

解説ナレーションC「我々は今、Gweagalの盾を見ています」解説ナレーションD「ロゼッタ・ストーンです」解説ナレーションE「モアイ像を見ています」

タイトル:「インスタグラムのviceworldnews、またはtheunfilteredhistorytour.comでツアーを始めてください」「VICEワールドニュース提供、フィルターを解除した歴史ツアー(The Unfiltered History Tour)」

21世紀、すべての博物館に必要なアイデアかも

いかがでしたでしょうか?この紹介ムービーを見た後、私はロゼッタストーンがイギリスにあることにこれまで全く違和感を感じてこなかった自分の鈍感さに驚かされました(元々鈍感なのですが、これまでとは…汗)。そしてこの取り組みに興味を感じ、ムービーの最後の方に紹介されていたキャンペーンサイトにアクセスしてみました。(↓こちらです)

theunfilteredhistorytour.com

サイトではロゼッタストーンやモアイ像の略奪について、印象的なムービーやオーディオでまとめられていましたし、大英博物館に行ってアプリを起動すれば、実際にその場で、没入感のあるオーディオで解説も聴けるようです(おかげ様で生まれて初めて、大英博物館に行ってみたくなりましたw)。

そしてこのサイトで印象的だったのが、一番下にあった「次はどの博物館のフィルターを解除したいですか?(ここにリクエストを書き入れてください)」という部分。

確かにフィルターを外して歴史を眺めた場合、残念ながら血や暴力、略奪から完全に無縁でいられる国や土地はないのだろうなぁ、と思います。そう考えてみると、このような「フィルター解除モード」のツアーが世界中のもっと多くの博物館に普及したら、マウントの取り合いに終始しがちな人類がより思慮深くなるきっかけになるのではないか、と思いました(無論、話を捻じ曲げて人々を暴力へと駆り立てる政治やプロパガンダの介入には気をつけなければいけませんが…)。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

自分の感覚の変化に驚かされる、8年前の”とある少女の物語”

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Photo by mana5280 on Unsplash

愚行が今、繰り返されている

ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中、ずっと頭の中にある映画が昔見た「それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~」。

シリア第3の大都市、ホムスで圧政に立ち向かった若者たちの姿を至近距離から撮影し続けたそれは凄まじいドキュメンタリーだったのですが、名古屋と同じ規模の街が完全に廃墟と化してしまう情景や、政府軍の攻撃から身を隠すため、破壊された民家の穴から穴をたどって移動したり、破壊された友人の実家から、家族のコーヒーカップを掘り出すシーンなど「戦争が起きたら街はこうなってしまうのだ」という衝撃的なシーンの連続でした。

それが今まさにウクライナで繰り返されているのだと思うと、シリア内戦の時点でこのような愚行を最後にできなかった我々人類の情けなさを痛感させられます。

それにちなんで今回は8年ほど前、セーブ・ザ・チルドレンがシリアからの難民の子供たちを救う機運を盛り上げるために作ったムービーをご紹介します。

「もし、シリアで起きた内戦があなたの街(ムービー内ではロンドン)で起きたら」という着想で、1人の少女の日々の一コマをライフログ風に描いています。

それではご覧ください。

Most Shocking Second a Day Video」[雑和訳] *キャッチコピー”ここで起きてないというだけで、起きてないことにはならない” #シリアの子供たちを救おう セーブ・ザ・チルドレン

イデアによる創作を、現実が超えてしまった

いかがでしたでしょうか?このムービーは公開当時も話題になり、これは無関心な人たちを動かす素晴らしい視点だ、と私も感銘を受けた記憶があるのですが…

8年後の今、連日ニュースでこのような映像に晒されている状況下で改めてこのムービーを見てみると、もはや当時のような無邪気さでは受け止められなくなっている自分に愕然としました。

 

何も感じなくなっていたのです。そう、このムービーの最後のほうの、光を失った少女の瞳のように…

 

最後に、冒頭で紹介した映画についての過去記事へのリンクを張ってまとめに代えさせていただきます。

wsc.hatenablog.com

いやぁ、戦争って本当に…はぁ。それではみなさん、また来週!

全米注目!スーパーボウル2022でのソーシャルキャンペーン その③ EV編

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Photo by Al Soot on Unsplash

今週も、スーパーボウルで流れた電気自動車(EV)CM特集

ロシアのウクライナ侵攻により世界がまるで変わってしまった感のあるここ2週間ですが、今回も先週に引き続き、2月14日に行われたNFLスーパーボウル中継で全米にオンエアされたCMの中から興味深かったものをご紹介します。

しかし街が破壊されていく様子を連日各種メディアで目の当たりにしながら、ユーモアのある広告表現について記事を書く、という気分にもなかなかなれないのですが、こういう悲しい時にこそ、テレビを見ながら家族や友達と笑い合えるような、他愛もないけどかけがえのない暮らしを守ることの大切さを思い知らされます。

さて、前回はPolestarGMという、新旧2社のEV自動車についてのCMをご紹介しましたが、今回はこれらに対抗してスーパーボウルにて自社のEVをアピールした、BMWとKiaのCMをご紹介します。まずはBMWから。シュワちゃーん!!

BMW「Zeus & Hera (ゼウスとヘラ)」

[雑和訳] *画面上に文字が入る"オリンポス山" ゼウス「我が神々よ。暗黒の空は告げた」ヘラ「ゼウスと私が隠居すべきと」ポセイドン「しかし、何処へご隠居を?」*ゼウスが雷を立てて場面転換、画面上に文字が入る”パームスプリングス、カリフォルニア" 近所の人「ゼウス、おい、ゼウス!これをチャージして…」SE:ジジジジ!(ゼウスの手から雷) 近所の人「わー!…ありがと」ヘラ「(電子レンジに手こずるゼウスを手伝いながら)あなた、そんな難しいことじゃないわ。出かけてくるから、Peggieを散歩に連れて行くの忘れないでね!」ゴルフ場の人「おーい、ゼウス。(電力を)ちょっと足して」SE:ジジジジ!(ゼウスの手から雷) ゼウス「もううんざりだ、こんな場所!」ヘラ「ちょっと考えなきゃね。」ヘラ「(照明などの調子が悪いのを受けて)あなた、直せそう?」ゼウス「フンッ!」SE:ジジジジ!(手からの雷で街をショートさせてしまう)ゼウス「Peggie、散歩に行こうか?」ヘラ「(BMWの大きな車と共に現れて)あなたなら、これで私を連れてってくれると思って」ゼウス「完全に電力の?」ヘラ「その通り!」ナレーション:BMWのiX、電力の究極の形がここに。*ゼウス、ヘラと歌いながら信号を雷で青に変える ナレーション:BMW、究極の電力ドライブマシーン。

KIA 「Robo Dog (犬のロボット)」

www.youtube.com

[雑和訳] *キャッチコピー”フル充電でイキイキと” ”完全電力のKia EV6” ナレーション: KIA、インスパイアする動き

主人公の役割のコントラストが面白い

いかがでしたでしょうか?BMWは電力の象徴として主人公にゼウスを持ってきて、それをシュワちゃんに演じてもらうことで小難しくなりがちなEVというテーマを楽しく描き切りました。一方Kiaは、可愛いペット型電動ロボットを主人公に、彼がKiaのEVによる充電で助けられる、というストーリーをハートウォーミングに描いています。

真面目にEVメーカーとしてのスタンスを表明したPolestarと、懐かしめのスターを活用してエンタメの中でEVを訴求したGMBMW、そして、昔からCMでは鉄板といわれている「動物モノ」を21世紀風にアレンジしてEVをハートウォーミング描いたKia。あなたは、どのアプローチが一番好きでしょうか?

くれぐれも見せかけだけのグリーンウォッシュには騙されないよう注意しなければいけませんが、どちらにせよこういう形でこの分野の競争が(マーケティングも含んで)進み、我々がより環境負荷の少ない暮らしに近づけるのであれば素晴らしいと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!