世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

”在宅”時代とファストファッション

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Photo by Lauren Fleischmann on Unsplash

私が勤める会社では新型コロナウイルス対策の一環として、2月下旬より在宅勤務が続いています。オンライン会議だとパソコンについているカメラで自分が映るのは肩から上だけですし、カメラをオフにしてしまえばランニング姿でもいけてしまうわけで、だいぶ服装には無頓着になったなぁ、と感じている方も私だけではないのでは、と思います。

そんなムードに買い物の自粛、店頭の営業時間の短縮などが重なりアパレル企業が軒並み売上を落とす一方、「どうぶつの森」などのオンラインゲームでは自分のアバターのために衣服を買う需要は伸びていて、「衣服」という概念自体がこの非常事態をきっかけに、いよいよ揺らぎ始めたのかもしれません。

ということで今回は、そんな事態を見越していたかのような北欧のアパレルブランドCarlingsの取り組みをご紹介します。

彼らの課題意識は、人々の自己顕示欲と環境問題の解決の両立。「SNSの登場以降、自撮り文化の隆盛などもあり、衣服の売り上げは60%増えた。しかしその売り上げアップは同時に、製造から廃棄に至る、あらゆる部分での衣服が環境に与える負荷の増大を意味する。人々の顕示欲を満たしたまま、環境に与える負荷を下げるために我々が始めた取り組み、それは…」という出だしで始まる、以下のビデオをご覧ください。

www.youtube.com

 そうです。彼らは人々が「画像の中だけ」で着れる、世界初の「デジタル衣服コレクション」を立ち上げたのです。

特設サイトにアクセスして商品を選び、自分の画像を登録するだけであら不思議。あなたがあたかもその衣服を、”本当に着込んでいるように”合成された画像が送られてくるのです。あとは利用者が、その画像をインスタなどにアップするだけ。このサービスにより Carlingsは人々に、環境に負荷をほとんどかけることなく、自己顕示欲を満たす選択肢を生み出しました。

バーチャル世界がどんどん拡大する中、自己顕示欲と環境への憂慮という、消費者インサイトの2大トレンドを綺麗に刈り取ったこのアイデアは、ファッション業界だけでなく、世界各国で消費の新しい形を示すものとして、大きな話題となったようです。

幸運なことにその特設サイトはまだ生きているようなので、興味があればみなさまの方でも一度、アクセスしてみてください。(購入時はそれなりのお金を取るのも、このブランドの本気度が感じられていいですね)。

digitalcollection.carlings.com

 このブランドは他にも、ARで環境問題に対するメッセージが表示できる「最後の一言(ラスト・ステートメント)」Tシャツを売り出すなど、野心的な取り組みを続けているようです。

carlings.com

環境に対する配慮で有名なPatagoniaと並んで、Carlingsは今後要注目のブランドといえましょう。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですよね。それでは皆さん、また来週!