忙しくなる一方のこの世の中。困っている人の立場を、きちんと認識して自分の意見を持つのは難しいもの。しかしみんなにきちんと考えてもらわないと、一部の極端な考えに社会全体が流されてしまう。。。
そんな流れを食い止めるのが、アイデアの力。
アムネスティ・インターナショナルによるこのオンラインムービー は、シリアなどからの難民がどのような苦難を乗り越えてきたのか、そして彼らも自分たちと変わらない人たちであることを思い出させてくれます。
・・・催眠術を使って。
<Through the eyes of a refugee/ 難民の目を通して>
Through the eyes of a refugee - a project by Amnesty International
<和訳>
難民を受け入れるのは難しいという人たいがいる。しかし彼らが、同じ目にあったらどう感じるだろうか。我々は普通の人々に、催眠術で難民がたどった旅路を体験してもらった。これはその記録である。
<ジョス・クラウス 催眠術師>
<アムネスティ・インターナショナル提供 難民の目を通して>
ジョス「来てくれてありがとう。座って。」「あなたにはこれから、難民、シリアからの難民の旅路を体験してもらいます。…催眠術で。」「指に集中して。指が下がると、まぶたが重くなってきます。そしてどんどん、催眠の世界に入っていきます。潜在意識が呼び覚まされて、あなたは私のいうこと全てに従います。私のいうことを、あなたはとても強く感じるようになります。…」
ジョス「それは何週間も続いた。あなたは長く包囲された街で暮らしていた。仕事から帰ると突然、銃声を聞いた。それは徐々に近づいてきて、あなたの家を銃撃した。ロケット弾が飛び込んで来て、爆発した。あたりは粉塵に包まれ、ほとんど息ができない。」
(咳き込む実験者たち)
ジョス「気がつくと、一番下の弟と妹が見当たらない。…やがて瓦礫の中に、その子たちの服が見えることに気づく。あなたはその子たちの服の切れ端を集める。お気に入りのぬいぐるみや、そして最後には、その子たちの体の一部も。」
(嘆き悲しむ実験者たち)
ジョス「3ヶ月後。あなたは家族と別れ、一人で町を出る。ガタガタの古いバスに乗って。ひどく暑く、鼻につくガソリンの匂いに死にそうな気分になる。警官がバスを止めると、パニックが起きる。他の乗客を追い、あなたは逃げだす。乗客たちとともに、ひたすら逃げる、逃げる…」
ジョス「8日後。あなたは小さなボートにいる。海のど真ん中で、波は高く、凍える寒さだ。震えをこらえ、別の難民たちのボートを見ると…なんてことだ!男たちが大きなナイフをボートに突き刺している!」
(叫ぶ実験者)
ジョス「船は沈み、溺れた難民たちの叫びにあなたはもう耐えきれない。」
(「こっちに来い!」「助けろ!」と叫ぶ難民たち)
ジョス「そして今。あなたは難民キャンプにいる。どこも物が腐った匂いで充満している。あなたは何日も何も食べていない。口に入りそうなものはどれも、腐ったものばかり。そしてあなたは病気にかかる。」
(えずき、悲観にくれる実験者たち)
ジョス「最後、あなたはギリシヤ人の女性に助けられる。彼女は、あなたが公式な難民としてオランダへ行く申請を手伝ってくれた。…あなたは、ついに自由の身になった。」
ジョス「…私があなたの頭を叩くと、あなたの催眠術は解かれます。」
ジョス「やぁ、ミルコ。」「起きて…やぁ、キック。…どうだった?」
キック「今起きた、って感じだけど。」
ジョス「じゃぁ、催眠術でどんな世界を体験したか見てみましょうか。」
キック「はい、ぜひ。」
(テレビモニターで、自分が催眠術にかかっている時の様子を見つめる実験者たち)
ジョス「ヘティ、どう思いました?」
ヘティ「身体中に寒気がしました。」
他の実験者「本当にひどいですね。」
キック「(これが自分自身の身に起きたら、)家族のために、自分は何ができるのだろうかと思いました。」
ジョス「実際にこれを体験した人に会いたいですか?」
実験者のひとり「ええ、ぜひ。」
(すると、ヒジャブを被った小柄な女性が歩いてくる。)
ジョス「…彼女はマーワさんです。」
キック「ハグしてもいいですか?」
ミルコ「ハグしてもいいかな?」
他の実験者「本当に大変でしたね。。」
他の実験者「怖かったでしょう。」
実験者のひとり「これがまさに、あなたが体験したことなんですか・・・?」
マーワ「はい。」
キック「あなたが僕らの国で歓迎されることを願うよ。今は安心して暮らせてるといいけど。」
マーワ「忘れようとしたんですが…」
(難民と実験者たちの会話の様子にキャッチコピーが入る)
タイトル:あなたの理解なしに、難民たちの行き場はない。
出口が見えない難民のニュースにすっかり慣れ、感覚が麻痺してしまった我々を立ち止まらせ、もう一度彼らについて考えさせてくれる、素晴らしいストーリーだと思います。