世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

これは明快!カンヌ国際クリエーティブ祭 ライオンズヘルス審査レポート vol.7

f:id:socialcamp:20150810001114j:plain

【写真キャプション】授賞式後、会場外で行われた懇親会での一コマ。今回ご紹介したアイデアを担当したコスタリカのクリエイター(左から二人目)と偶然、出会うことができました。私も受賞を後押ししたことを伝えたら、とてもとても、喜んでいました。でも向こうの人、みんな握手が強くて痛いんですよね…笑

みなさんこんにちは。間に夏の特別補習を入れてしまいましたが、今回からは引き続き、私が審査員を担当したカンヌ国際クリエーティブ祭・ライオンズヘルスのヘルス&ウェルネス部門で見つけた印象的なアイデアをご紹介してまいります。

今回のアイデアは中米コスタリカのファーマーズ・マーケットで行われた、ガンの早期発見を啓蒙するものなのですが、審査の過程では正直、一部の審査員から「あまりにシンプルすぎるのではないか」という意見も出ました。ただ、スーパーに行けばなんでも買えるヨーロッパや日本などの先進国とは違い、途上国ではマーケットは暮らしの中に根付いた重要なインフラであり、人々が毎日のように足を運ぶマーケットでこのようなメッセージを発信することは自分たちが想像するよりもずっと効果的であるはずだと私が援護射撃を行うことで、無事銅賞に引き上げることができました。

表現的にもノンバーバルでわかりやすい内容で、個人的にはとても好きな作品です。ビデオも「いい意味で」スカスカなので、アイデアを愛でつつ、コスタリカのマーケットを夏休みに観光しているような気分でぜひ、お楽しみくださいませ。

vimeo.com

<ビデオ和訳 ※以下すべて字幕の翻訳>

ガンの早期発見は生存率を90%高めるといわれる。…しかし人々は検診を受けない。

<タイトル:腐った細胞 - ガンの早期発見の大切さを伝えるシンプルなデモンストレーション>

<メッセージ:ひとつの腐った細胞が、他をダメにする。ガンを早期に発見しよう。>

ファーマーズ・マーケットがこのような試みを許可したのは、コスタリカでは初めてのこと。

 この広告は2万人にリーチし、見た人の12%が腫瘍学者からの情報を求め、検診センターを紹介された。

最大手の報道機関も、このメッセージを国中に拡散。

<ドラッグストア Fischel – あなたには健康でいてほしい>

いかがでしたでしょうか?このアイデアは「胃袋や腸が大体どんな形をしているか」がわかり、「腐ることは良くないことだ」という共通認識さえあれば、誰でも意味が分かってしまうところが強いな、と思います。

日本にも昨今、多様な文化的背景を持つ人々がどんどん訪れるようになってきています。同質文化の中で「以心伝心」に甘えてきた自分たちですが、必要な時にはさっと、世界中の人に通じるこのアイデアのような「シンプル」かつ「ユニバーサル」な気遣いや表現がすぐに提示できるような、準備や心構えをしておきたいな、と感じさせてくれる一品でした。