【写真キャプション】 審査翌朝、プレスカンファレンスでグランプリを発表します。ここできちんと論理的に説明できる結果をまとめることが、審査委員長の責務のひとつ。写真は我らが審査委員長アンドリューによる、素晴らしいスピーチの一コマ。
みなさんこんにちは。今回も私が審査員をつとめたカンヌ国際クリエーティブ祭・ライオンズヘルスのヘルス&ウェルネス部門で見つけた、素晴らしいソーシャルキャンペーンについてご紹介します。この部門で審査していて面白かったのが、審査カテゴリーの中になぜか「Animal Health(動物の健康について)」というものが含まれていた点。他の応募作品には人間の難病や、喫煙予防などについてのシリアスな話題が多かったのに比べて、このカテゴリーでは以前にこのブログでもご紹介したペディグリーの感動的なムービー(この記事の末尾にリンクします)が応募されていたりと、ペットを扱った心なごむものが多く、応募総数1430本の中でも一服の清涼剤になっていました。今回はそんな中でもなるほど、という視点の切り替えで見事銅賞を獲得した、ブラジル発のアイデアをご紹介します。
<値段のないペット>
<ビデオ和訳>
NGOスタッフのコメント「収容シェルターはいつもひどい状態です。収容されたペットたちは病気や虐待、収容過多で死んでいきます。飼い主たちの中には、シェルターに捨てれば里親も見つかり、適切なケアを受けられると思い込んでいる人たちもいるようですが、たいていのペットはそこで病気やうつなどにより、命を失ってしまうのです。人々はペットショップの動物を飼うときは結構なお金を払います。一方で、(無料で引き取ることができる、シェルターに収容されているペットたちのように)お金を少しも払わずに、飼い主の暮らしに大きな喜びを与えてくれるペットもいるのですが・・」
<値段のないペット>
ペットショップの店員A「いらっしゃいませ」
客A「このブチのある犬が欲しいんですが」
ペットショップの店員A「彼ですか?…ああ、無料です」
客A「××××!?」
客B「タダなの、ホントに!?」
客C「つまり、お金を払わずにこのまま連れて帰っちゃってもいいってこと?」
ペットショップの店員A「そうですよ」
客D「ホントに!?少しまけてくれないかってお願いしようと思っていたのに…」
ペットショップの店員A「そう。本当なんです」
タイトル:私たちは、客には内緒でペットショップの動物たちを、シェルターに収容されたペットたちと入れ替えたのだ
客E「タダでくれるってどういうこと?」
客F「え、本当に払う必要ないってこと?」
ペットショップの店員A「その通りです」
客G「冗談でしょ?」
客Gの連れ「いいじゃない、連れて行きましょうよ。」
客H「あの子がいいわ!」
NGOスタッフのコメント「結局、一番大切なのはペットと飼い主との共感なんです。そのペットが血統書付きかどうかは、実は関係のないこと。大事なのは、ペットショップのケースの前にいる人間と、その向こう側にいるペットがその場でいかに愛情を育むか、なのです」
タイトル:命を買うより、救うほうがもっといい
“pricelesspets.com.brにアクセスを”
以上、いかがでしたでしょうか?「日常の当たり前」にちょっとした非常識をひとつまみ入れることで、課題を丸々解決してしまうかもしれない、素晴らしいアイデアですよね。ちなみにカンヌでの審査中、審査員たちの反応として共通していたのが「応募ビデオがもう少し良ければなぁ」というもの。審査に応募されてきたビデオは今回ご覧いただいたものとは異なり、後半部分にこの企画へのメディアの大きな反響や、その結果、ブラジルの他の50箇所近いペットショップでも同じ取り組みが行われたことなどが説明されていたのですが、どちらにせよもう少し、コメントやお客さんのリアクションだけでない「仕組みの鮮やかさ」がビデオできちんを説明されていれば、と私も思いました。
ただし本質的に大事なことは、ビデオの出来栄えやカンヌで受賞したかどうかよりもまず第一に、このアイデアがいかに社会の課題解決に貢献したか、ということ。以下に関連するリンクを貼っておきますので、お時間ある方はぜひ覗いてみてください。
それでは今週も皆さま、暑さに負けず頑張っていきましょう!
【pricelesspets(値段のないペット)公式サイト】
Priceless Pets - Animais Valiosos
【この作品と同じくライオンズヘルスで銅賞を獲得したペディグリーの<出所初日>】