皆さまこんにちは。ただ今カンヌのとてつもなく弱いWifi環境からこのレポートをお送りしています。さて私、カンヌ国際クリエーティブ祭の前哨戦ともいえるライオンズヘルスに審査員として参加してまいりましたので、今回からはそこで見つけた素晴らしいソーシャルキャンペーンについていくつか、取り上げていこうと思います。
ライオンズヘルスとは「Life-Changing Creativity(人生を変えるようなクリエーティブアイデア)」をスローガンに、世界中から集まった医療や健康に関するキャンペーンアイデアを評価する賞です。部門としては、より医療に近い「ファーマ」部門と、より一般に近い「ウェルネス&ヘルスケア」部門があり、私は後者の審査員を担当しました。
参考URL:http://www.canneslions.com/lions_health/
ウェルネス&ヘルスケア部門の審査は写真のように、世界中から集まった15名のクリエーティブディレクターたちにより行われたのですが、消費者向けの商材を扱う代理店からだけでなく、製薬会社をクライアントとするメディカル系の代理店からの審査員も多く含まれているのが特徴的でした。よって他のカテゴリーに比べても審査はより厳密で、「面白いだけのもの」や、「信ぴょう性に疑問点がつくもの」は、どんどん切り捨てていくのが印象的でした。
それでは第1回目は、世界中から集まった1400を越える作品の中から見事グランプリに選ばれた、この作品をご覧いただきましょう。
<INTIMATE WORDS(デリケートな呼び名)>
<ビデオ和訳>
<メキシコシティ近郊の村では>
<毎年5000人の女性が子宮頸癌で命を落としていた>
<子宮頸癌は村の女性の、最も高い死亡原因>
<なぜか?>
女性A「うちの村では女性器を“udxanlania”という、ひとつの言葉でまとめて呼ぶのです」
女性B「うちの村では子宮や排卵管、卵巣といった女性器の内部の呼び名がありません」
<女性のデリケートな部分はタブーとされているゆえ、その呼び名がなかったのだ>
女医「女性器が癌におかされていたとしても、その呼び名がなければ、女性たちにとって症状を伝えることは困難です」
<症状を言いあてる言葉の不在は、間違った治療につながる>
always プレゼンツ “デリケートな呼び名”
<デリケートな場所の呼び名を開発するために>
“子宮頸部=赤ちゃんのお家のドア”
<村の女性がより明確に症状を言い表せるように…>
<そして、癌のような深刻な病気を事前に予防するために…>
<…これらの呼び名は一冊の本にまとめられた>
<世代を超えて、呼び名を語りついでいくために>
“命を救う、すごいアイデア”
“女性を思う、女性のブランドによる見事な事例だ”
“必見!”
<子宮>=女性A「赤ちゃんのお家」
<卵子>=女性B「女性のたまご」
<卵管>=女性C「女性の卵の通り道」
<卵巣>=女性D「女性の卵が生まれるところ」
<膣>=女性E「カップルが出会う場所」
<子宮頸部>=女性F「赤ちゃんのお家のドア」
<わずかの言葉で、大きな違いを。>
always
さて、いかがでしたでしょうか?審査室では最後、これを含む3作品がグランプリ候補として残り、そこから大激論が繰り広げられたのですが、やはり「実施されたエリアこそ小さいものの、一過性のキャンペーンとは違い、この言葉を生み出すことで、村の女性の娘の代や、孫の代まで良い影響を与えられるアイデアである点が傑出している」ということで、最後は全員納得のもと、この作品がグランプリに選ばれました。
激論の後には「こんなに建設的でフェアなみんなと審査ができて本当に嬉しい」とうっすら涙ぐむ審査委員長と、4日間に渡る審査を終えてすっかり親しくなった審査員たちと熱いハグ。
このグランプリがきっかけとなり、世界中の企画者たちがもっともっと素晴らしい「Life-Changing Creativity」を出し合うようになればいいな、と強く思いました。
PS.カンヌに来て何人かの同業の皆さまに「ブログ読んでるよ!」と、嬉しいお言葉をいただいております。帰国後のブログもぜひ、お楽しみくださいませ。