成功するソーシャルキャンペーンに共通する要素のひとつとして「もし自分が同じ立場だったら…」と、普段考えもしないことを人々に思い描かせ、共感させるということがあります。今回は交通安全をテーマに、見る人が「もし自分が当事者だったら…」と考え、自分の運転を見直さざるをえないほど、強烈なインパクトを残すことに成功したムービーをふたつご紹介します。
1:Mistakes(間違い)
まずはニュージーランドから、スピードの出し過ぎを戒める1本。
<ムービー和訳>
A「ごめん、やっちまった」
B「そんなタイミングで出られたら、止められないよ」
A「頼む。なんとかならないか、ちょっとした間違いなんだ」
B「もっとゆっくり走ってたら、何とかなったかもしれない。だけど…」
A「お願いだ!後ろに子供も載せてるんだ。」
B「…スピードを出し過ぎてるんだ。…すまない」
メッセージ:他人は間違いを犯す。スピードを落とせ。
このムービーのメッセージ自体は「スピードは控えめに」という、町内の掲示板にでも貼ってあるようなシンプルなものです。ただ、そこにひとひねりの演出を加えることで、誰もがスピードの怖さを実感せざるを得ないムービーになりました。途中でちょっとだけ動く車が、怖すぎます。
2:Un geste lourd de conséquences(ひとつの行為が破滅をもたらす)
続いてカナダのケベック州からは、飲酒運転を戒める1本。
<ムービー和訳>
メッセージ:ひとつの行為が破滅をもたらす。飲む時は、運転しない。
こちらもメッセージ自体は「飲んだら飲むな」という、すこぶるストレートなものです。ただ、酔ってキーを手に取ることから始まる連鎖反応を一本のヒモで執拗に描いていくことで、言葉だけでは短時間で表現することが難しいリアリティを感じさせることに成功しています。
メッセージをアピールする時に大切なのは「どうすればこちらの言いたいことを相手に押しつけられるのか」という一方的な考え方よりも「どう伝えれば相手が心を動かしてくれるのか」というイマジネーションであることを、改めて教えてくれる2本でした。